ジップ・インフラ・ストラクチャーは今注目のベンチャー
自走式ロープウェイ「Zippar」は、日常の公共交通機関としての利用も期待できる。MaaSとZippar導入を同時に考え、「あたたかく見守っていく姿勢」と「冷静な目」の二つが求められる。
1、次世代交通システムについて
②自走式ロープウェイ「Zippar」について
質問①
令和3年6月にジップ・インフラ・ストラクチャー株式会社と締結した連結協定。
どのような経緯で締結に至ったのか?ご説明ください。
回答①
令和2年9月に策定しました表丹沢魅力づくり構想では、表丹沢の魅力向上に向けた課題の一つとして、回遊性の向上を挙げています。特に構想のエリアは東西に広がっており、点在するヤビツ峠レストハウスや表丹沢野外活動センター、県立秦野戸川公園といった拠点施設をつなぐ手段に乏しいことから、その方策を検討していました。そのような中で、昨年5月、新聞に掲載された自走式ロープウェイ「Zippar」の記事が、表丹沢の資源間をつなぐ移動手段としての活用可能性を感じさるものであったことから、本市から同社に問い合わせを行い、翌週には同社の代表者と市長との意見交換が実現しました。これをきっかけに、調整を進め、翌月の6月には連携協定の締結に至ることができました。
昨年5月5日付けの神奈川新聞を見て、市長がすぐに反応されて、電話をかけ、約2月後の6月29日には連携協定を結んでいるわけだから、市長の見事な早技、一本釣りだったと言える。しかも、社長の須知さん率いるジップ・インフラ・ストラクチャーは、このZipparで、昨年末には、ホリエモンさんが審査員をつとめるメイクマネーアンダー24という大会において、グランプリを獲得している。この大会の第1回には、野菜や魚の生産者と消費者をつなげるネット通販「食べチョク代表の秋元里奈さん」も出場しているなど、有望なベンチャー企業の若い経営者を輩出している。
また、今年11月にはネパールにおける都市交通システム導入を促進するために、ネパールの企業とも基本合意契約を締結するなど、ジップ・インフラ・ストラクチャーは今注目のベンチャー企業。
質問②
次にこの連結協定の目的を教えてください。
回答②
この連携協定の目的は、次世代交通システムの開発及びそのシステムのまちづくりへの活用を通し、市民生活の向上、地域の活性化及び活力ある市内工業の持続的な発展に役立てることです。具体的には、自走式ロープウェイ「Zippar」の研究開発が本市で行われ、その過程で、市内の既存企業が関与することで、市内工業の発展と活性化につなげること。また、メイドイン秦野の次世代交通システムが、国内外に広く情報発信されながら実用化され、更に移動手段としての導入の可能性も検討していくことなどで、まちの活性化につなげることを目指しています。
連携協定の目的は主に3つある
1、Zipparの実験を本市で行うこと
2、Zippar導入の可能性も考えた本市のまちづくりへの活用
3、研究開発に本市の既存企業が関与することによる、市内工業の持続的な発展と活性化
質問③
既存の公共交通システムとの比較において、自走式ロープウェイ「Zippar」の優れた点(メリット)はどのようか?
回答③
最大の特徴は、ロープウェイでありながら、ロープとゴンドラが独立しており、従来のロープウェイでは不可能であったカーブや分岐を自由自在に設けることが可能で、柔軟な路線設計ができることです。これにより、公道上の高架軌道だけで建設できるため、用地確保が不要となることから、既存のモノレールに比べ、5分の1の費用(10億~20億/km)と期間(6か月)で建設が可能となると聞いています。
また、運行管理システムによる自動運転のため運転手が不要となること、バッテリーによる電動式のためカーボンニュートラルのまちづくりにも適していることなどが挙げられ、特に、慢性的な交通渋滞といった課題を持つ都市空間において、大変有効性が高い新たな公共交通システムであるとのことです。
大きく5つ、メリットをあげて頂きました。
柔軟な路線設計、用地確保が不必要、低コスト、カーボンニュートラルへの対応、交通渋滞の緩和
質問④
当初、市長は表丹沢の回遊性の向上に魅力を感じられたとのことだった。しかし、このZipparの特性を考えると、むしろ日常の公共交通機関としての利用も期待できるのではないか?
回答④
質問⑤
実際にこのZipparを導入する場合に想定される課題は何か?
回答⑤
自走式ロープウェイ「Zippar」については、費用対効果も含め、本市のまちづくりに有益性が認められるとともに、市議会の皆様をはじめ、市民の皆様にもご理解を得られることが前提となりますが、連携協定の目的には、次世代交通システムのまちづくりへの活用を見据えたものであると考えています。
導入する場合に想定される課題についてですが、まず、既存の交通事業者との運営主体の役割を含むコンセンサスの必要性が挙げられるほか、新たな公共交通システムの整備となると、大きな財源や法規制など、様々な課題も見込まれることからも行政計画への位置づけや整理は必須であり、国や県などの関係機関に対し、財政的な援助や許認可などに関する交渉を行っていく上でも前提となる手続きであると考えています。
①他の公共交通機関とのコンセンサス
②国や県などの関係機関との協議
ポイントは、コンセンサスを得る上でも、国や県などの協議においてもMaaSとZipparの導入を同時に考えていく、プレゼンしていくということ
①他の公共交通機関とのコンセンサス
「新しくロープウェイ作りますから協力してください」とお願いするんじゃなくて、「一緒にこういう世界を作りませんか?」って説明するんです!
移動を所有から使用へ変えて、交通の地産地消を一緒に進めていきませんか?
クルマ中心の社会から人間中心の社会へ変えていきませんか?
その方が既存の公共交通機関だって活性化しますよ!
②国や県などの関係機関との協議
国としてもMaaSは推進していくと言っている。
「未来投資戦略2018」の重点分野の中でMaaSに関連する取組について具体的に記載がなされる等、政策議論や検討が始まっているんです!
質問⑥
令和4年度予算にも予備調査として80万円計上しているが、何のための予算なのか?予定している導入に向けた基礎調査の内容はどのようか?
回答⑥
令和4年度に予定している調査は、まず、交通インフラの構築状況と、公共交通ネットワークの状況を調べることで、既存ネットワークの輸送力の検証しながら、公共交通利用時の移動時間など、現状の課題を整理します。その上で、自走式ロープウェイ「Zippar」を敷設する場合のルートの検証、必要な車両数やダイヤ構成などの設計を行い、運行イメージを具現化させながら、導入の可能性や課題などを調査結果として、まとめることを想定しています。そして、この調査を実施することで、既存交通事業者とのコンセンサス、関連行政計画への位置付けや整理、事業計画策定に向けた本調査など、今後の取組みにつなげていきたいと考えています。
また、ジップ・インフラ・ストラクチャー株式会社からも、本市が先行的にこの基礎調査に取り組み、モデルケースとなることは、自走式ロープウェイ「Zippar」の導入を他の自治体等に働きかけるときの一助になるとお聞きしています。
このことから、基礎調査の実施は、同社への事業支援にも結び付くと考えておりますので、調査の実施についても連携を密にしながら、取り組んでまいります。
質問⑦
この80万円の支払い先はどこですか?
回答⑦
ジップ・インフラ・ストラクチャー株式会社
質問⑧
連携協定の目的には、事業支援は入っていないと思うのですが、、どうですか?
回答⑧
質問⑨ 政策部長へ
本件は、市長マニフェストにも掲げられているため、ベンチャー企業への財政的支援を打ち出すことで、新たな未来企業が秦野市に移り、活性化すると思われるが、今後の財政的支援の方向性をうかがいたい
回答⑨
「あたたかく見守っていく姿勢」と「冷静な目」の二つが求められる。近年は日本でも、ベンチャーやスタートアップと呼ばれる企業を立ち上げる人が増えている。ベンチャー企業が成長していく過程は、一般的に4つの段階(ステージ)があるシード、アーリー、ミドル、レイターの4つ。昨年3月、ジップ・インフラ・ストラクチャーは、独立系ベンチャーキャピタルANRIを引受先として、シードラウンドで3000万円の資金調達を実施。現在のジップ・インフラ・ストラクチャーは、シード段階にある。
ロープウェイZipparに対する反響は大きく、投資家の関心を引くために、高い確率で当初の事業計画を実現できそうだと証明することが必要な段階。まだ銀行など間接金融からの資金調達は難しく、自己資金やエンジェル投資家、ベンチャーキャピタルからの先行投資による資金調達が主になる段階。
彼らにとっても、秦野市と連携協定を締結したことは、資金調達する上でも、信用の面で必ずプラスになる!
資料④国内スタートアップによる資金調達金額年間推移
資料⑤国内スタートアップによる資金調達金額ランキング
先ほど述べた食べチョク代表の秋元里奈さんは、会社設立当初VC70社から断られ、今では8億円の資金調達に成功。2020年の1年間には、コロナの影響もあって利用者数が100倍になるなど、ベンチャーは化けるとすごいし、こうしたI T業界のスピード感は半端ない。しかし、ロープウェイZipparは交通インフラ、ハード面での開発なので、開発に巨額な資金と時間がかかると見る方が適切でしょう。結果が出るまで時間がかかるかもしれない、長いお付き合いになるかもしれない。秦野に移って来られたのも、都内で確保することができない研究開発のための広いスペースが必要だから。そうしたことを全て理解した上で、本市にできることを考えていく。しっかりコミュニケーションをとっていく。
少なともアーリー、ミドル、レイターと成長していけば、資金調達には困らなくなる、逆に言えば青田刈りのように、今の段階で恩を売っておくという戦略も必要なのかもしれない。
しかし、化けることのできるベンチャー企業は、全体の中でもほんの僅かであるという冷静な目を失わず、かつ暖かく見守っていく姿勢が本市に求められることだと思いますが、政策部長どうでしょうか?
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